わたしのとなりには、だいたいお父さんがパジャマでいる。

「ねぇ、トトロっているのかなぁ?」

娘の突然の質問に、思わずプレイ中のツムツムの指を止める母。

彼女の脳内では緊急会議が開かれている模様。

ここで「いない」と言ったら、夢を持てない子供になってしまうかもしれない。

しかし「いる」と言ったら、現実を知らない大人になってしまうかもしれない。

そもそも宮崎先生の世界観に、一般人である私が是非を下してよいのだろうか。

いや、当時のキャチコピーでは、まだ日本にいるって言ってたような気がするな。

いるのか?そしたらまだいるのか?

ツムツムのタブを瞬時に閉じて、

「トトロ wiki」で検索。

制作時期は1987年、時代設定は昭和30年代前半らしい。

1987年当時の「まだ」は、果たして現代まで有効なのだろうか。

ってかタイトル「となり」ってなってるけど、となりって、どこ。

どこに対する、となり?

え、私?

違うか。

よし、こういう時は

「なんでそんなこと聞くの?」

秘技・質問返し!

すると娘は、口をきゅっとむすんで

「ん~?じゃぁいいや」と去っていった。

「よしっ」母は小さくガッツポーズをした。

そうしてふと我に返る。

「現実を知らない大人になってしまうかもしれない」

そう思ったけど、あの子、もう32歳だわ…。

というやり取りがされているとか、いないとか

松原家のみんなは、今日も元気です。

皆さんはいかがお過ごしですか?

あっという間に11月になり、東京もだいぶ寒さが本格化してきました。

少しずつですが、日常を取り戻せている方もいらっしゃることでしょう。

一方で、まだまだご苦労が多い方もいらっしゃると思います。

私も様々な面で我慢の日々が続いていますが、そんな中でも小さな幸せを見つけながら健康に過ごしております。

さて、冒頭のトトロの話ですが、

兄がずっと小さいころ、広島にある母の実家でそのようなものを見たことがあるそうです。

母の実家はもともと料亭だった場所を改装したので

一般的な民家とは仕様がだいぶ違っていました。

客間や居間、台所など部屋がすべて独立していたので

毎回靴を履いて移動しなければならず、正直かなり不便でした。

古い家だったので、お手洗いももちろん水洗ではなく、お風呂も薪で沸かし、廊下は歩くとミシミシきしみました。

毎夏遊びに行くたびに、一人で暮らす祖母には負担が大きいだろうなと思っていました。

そんな祖母の家には長い縁側があり、

兄たちは幼いころ、よくその下にもぐって遊んでいたそうです。

当時私は生まれたばかりだったので一緒に遊んではいませんでしたが、

長男と次男はやんちゃで、家中を冒険していました。

ですがあるときから、ぴたりと長男が縁側の下で遊ばなくなったそうです。

その場所に入ると服も汚れるしほこりっぽいので、母としては良かったのですが、その理由が少し気になりました。

帰京のタイミングで、母がふと長男に尋ねてみると、「ここにトトロがいたんだ。白いやつ」と教えてくれたそうです。

それが本当にトトロだったのか、似た何かだったのか、猫だったのかはわかりませんが、それを聞いた祖母は「あぁ、そうなんだねぇ」と驚く様子もなく優しく笑っていたそうです。

トトロだったらまた会いたいと遊びに行きそうなものですが、長男は「もう会えないから」と言ったきりそれ以上話すこともなかったそうです。

数年たったある夏、再び祖母の家に行った時のことです。

私が中庭で遊んでいると、次男がひょっこりあらわれ、私を見つめていました。私は枝で土に絵を描くことに夢中でしたが、その視線は少し気になりました。

結局何を言うわけでもなく、気が付くと次男はその場からいなくなっていました。

帰る日の朝、祖母の家を出るタイミングで次男が突然縁側に駆け寄り、その下をのぞき始めました。

何かいるのかと私も一緒にのぞきましたが、ただ暗いばっかりで何にもありません。

すると次男がボソッと「あ~あ。えりかが来たから逃げちゃった」とこぼしました。

その後、何がいたのかしつこく聞きましたが結局次男は教えてくれませんでした。

後になって母にこの話をしたら、長男がみたというトトロの話を教えてくれました。

私も見たいと駄々をこねましたが、すでに東京に帰っていたので願い叶わず…。

唇を尖らせている私に、「きっと今度はえりかの番だね」と母は優しく言いました。

ですが翌夏も、その翌夏も私がトトロらしきものに出会うことはなく、だんだんと記憶から遠ざかっていました。

数年前に祖母も亡くなり、もうあの家に行くこともありませんが、先日不思議な出来事があったのです。

それは自分の部屋の掃除をしていた時のこと。

ころん。と、どこからともなく一つのどんぐりが部屋に転がってきました。

拾ってみると見たこともないほど鮮やかな色をしていて、まだ若いようです。

けれど私にはこのどんぐりに心当たりが全くなく、しばらくぼんやりと眺めていましたが、ふと祖母の家でのことを思い出しました。

「トトロだ。トトロがついに私に会いに来てくれたのだ」と。

二十数年前の願いが、まさか東京で叶うなんて。

私はそのどんぐりを握りしめ、ベッドの下やクローゼットの中を見わたしました。

胸の高鳴りを抑えきれず、興奮ともどかしさで思わず部屋を飛び出しました。

そうしてリビングにいた母に、すかさず尋ねたのです。

「ねぇ、トトロっているのかなぁ?」

母はスマホの手を止め、数秒空を見つめると、またスマホに目を落としました。

「なんでそんなこと聞くの?」

母は私を見ようとせず、スマホの画面を見つめています。

その時ふと、当時の兄たちがトトロについて詳しく話そうとしなかったことを思い出しました。もしかしたら、このことは親に話しちゃいけないのかもしれない。

私は深く追求されるのを恐れ、冷静を装いながら「ん~?じゃぁいいや」とすぐさま母に背を向けました。

部屋に戻って静かに鍵をかけると、どこかに隠れているであろうトトロに向かって

小声で「大丈夫ですよ~」と言いました。

が、いっこうにトトロの気配はありません。

耳を極限まですまし、カントリーロードがフルコーラス流れるほどの時間をじっと待ちました。

すると、クローゼットの扉が数センチ開いていることに気が付きました。

私の性格上、きちんと閉めずにおくことはありません。

『…ここか。』

完全にもう、犯人が逃げ出した人質を見つけたときのそれですが、忍び足で近づきました。

恐る恐る覗き込むと、そこには

ミィ。

ミィがはさまってる。

なんならこっちにガンつけてるぽい。

ベットサイドにいたミィを、私が掃除のときに落としたぽい。

あ、待って。

このどんぐりかと思ってたやつ、どんぐりじゃないぽい。

ミィの髪の毛ぽい。

落ちた衝撃で折れたぽい。

トトロじゃないぽい。

え。

いや前にもあったなこんなこと。

そういえば

思い返せば数年前も、このミィの髪の毛拾って謎解きしてたわ。

なんならそのとき使った接着剤、まだあるわ。

ほんと、人間学ばないと、だめですね。

まぁでも今回のことで懐古の情とやらをね、味わえたわけで。

懐かしむ思い出があることに感謝したいですよね。

ミィの折れた髪の毛にノスタルジーを覚える、そんな人生も素敵ですよね。

ついに私はトトロに会うことなく大人になってしまったけれど、兄たちが出会った白い「それ」はなんだったのでしょう。

そして何故私には見えなかったのか。

いまだに心残りです。

いやでも「大丈夫ですよ~」っていう独り言、本当、大丈夫じゃなかったなぁ。

あ、ミィの髪の毛は、無事接着剤でくっつけました。

この顔である。

そんなこんなでいろいろあるけれど、私は元気です。

※このブログはジブリへの愛をこめて書かれたものです。

追伸。

11月からstand.fmというラジオアプリで

新番組「松原江里佳のちょっとお時間よろしいですか?」

毎週月・木あさ8時~配信中です。

アプリがあればいつでも何度でも聞くことができます。

レター機能でメッセージ、コメントをお待ちしております♪

ではでは今日は特に長くなりましたが…このへんで。

おまけの写真です。

オタ活中の一枚。カフェラテには推しのカラープリントがされています。

が、諸事情によりここでは自粛…。

では♡